第1章 その顔は、ただ俺を煽るだけ。
クリスマス当日はというと、もちろんカフェでのやりとりをすっかり忘れ、鼻歌を歌いながら準備をしていた。
そろそろ来る頃かも。鍵開けとこうかなと玄関に向かう途中でベルが鳴る。
慌ててドアを開けると、そのまま力強い腕に引かれた。
さみーと言いながらぎゅーっと抱き締めてくる快斗の背中に手を回すと、一瞬抱き締める力が強くなったあと離れた快斗の香り。
顔を見ると寒さで鼻が赤くなっていて、思わず笑いそうになったけど、ここは我慢。
きっと、かわいいなんていうと拗ねちゃうだろうし…
かわいいと言えない代わりに、冷えた快斗の頬を両手で包む。
あったけぇー、と目をつむる快斗がやっぱりかわいくて、触れるだけのキスをすると目元を紅く染め目を逸らされた。
「快斗って、自分から仕掛けるときはいつも普通なのに、仕掛けられるのは……」
──弱いんだ。と言おうとした口は、快斗の唇に強引に塞がれた。
「んっ……か、いと…息できなっ……」
息ができずに開けた口へ、快斗の舌が入ってくる。
舌を絡め取られ、上顎をなぞられて、ぞわぞわする。足の力が抜けそうになったとき、快斗の舌が離れた。
少しボーっとする頭のまま快斗を見上げると、すでに目元の紅さがなくなった快斗の顔が再び近づいて。
──顔、えろ。
そう耳元で囁き、唇をペロッと舐められた。顔に熱が集まるのがわかる。
それを見た快斗は満足そうに笑ってリビングに入っていった。