第1章 不機嫌の裏側〜爆豪勝己〜
はぁっと深いため息をロッカールームで吐く
これで今日何度目だろう
あの後の1時間半のうちずっとため息は出っ放しだし、ミスはするで散々だ
「そんなに気にするならあんな事言わなきゃ良かったのにぃ」
「夢ちゃん、だってぇ」
隣のロッカーで同じように私服に着替えている夢ちゃんにしゅんとする
「私はさ、やっとに春が来たんだなって喜んでたのに怒らせるなんて馬鹿だねぇ」
「春も何もあの子はたまたま私を助けてくれただけだし、会ったばかりだし、それに!高校生だよ!」
「恋に時間も年の差も関係なしっっ!押して押して押せっ!」
「夢ちゃん・・・アナタは何でそんなに肉食なの?・・・」
ガッツポーズをして叫ぶ姿に若干後ずさりをする
「でもさ〜これは冗談じゃなくて、彼のこと気になってるなら手放さない事だね」
バタンとロッカーの扉を閉めながら「カウンター側から見てるアンタ、とても楽しそうだったよ」
「え・・・?」
「グダグダ考えるより直感よ直感」
そう言ってヒラヒラと手を振り「お先〜」と言いながら夢ちゃんは部屋を後にした
ポツンと残されたは夢ちゃんに言われたことをグルグルと反芻していた
最初は怖い子だなと思った
まぁ、顔が怖かったしね(笑)
でも連絡を取り合ってメールの端々に礼儀正しさとか優しさが垣間見えて
会って話すとぶっきらぼうだけど楽しくて
時折見せる笑顔がちょっとだけ可愛くて
きっとこの先ももっと見てみたくなる
はよしっと気合を入れるとバタンと勢いよくロッカーの扉を閉めた
家に帰ったらメールしてみよう
ごめんねってまた会いたいって言い訳がましいメールじゃなくて今思っていることを一言送ってみよう
そう思いながら裏口から出て扉を閉めているとふいに後ろから声が聞こえた
「バイトお疲れ様、一緒に帰ろうかと思って待ってたんだ」
「・・・・・先輩」
なんだか面倒くさくなりそうな予感・・・