第9章 君の匂い HQ 日向翔陽
その日から日向はに会いに行く為に図書室を訪れた
勉強教えてくれなんて建前での顔が見たくていそいそと通った
最初は嫌そうな顔をしたり無視されていた日向だがだんだんと対応が柔らかくなったような気がして今度は思いきって下の名前で呼んでみた
最初こそピクリと反応を示したがさほど気にしてない様子だったのでそのまま呼び続ける事にした
「勉強教えて下さい!」
「駄目」
毎回出だしは同じ
それでも日向はことわられることを前提で口を開く
これでも初めの頃は本当に勉強を教えて貰いたくて拝み倒した
それがいつの間にかの顔が見たくて図書室に通う目的となってしまった
日向は部活が始まるギリギリまでと会話をして慌てて出ていく
日向にとってはバレーも大事 だけどと交わす時間と会話も大事になっていた
(あ、そろそろ窓閉めなきゃ…)
そう思ってはカウンターに読み掛けの本を置いて窓を閉めに立ち上がる
最近、本の進み具合がいまいちだ 理由はわかっているけどわかりたくもなかった
あの1年生の少年にずっと話し掛けられて読んでいる本に集中出来なかった
こんなことは初めてで自信も驚いている
大抵は話し掛けているのに本を読まれている態度に諦めて話し掛けなくなる
だけど日向は違った
が返事をしなくても、目線が本の文字でも お構い無しに楽しそうに話し掛けてくる
その様子にも思わず耳を傾けてしまう たまについ相槌を打つと益々喜んで話し出す
はくるくると楽しそうに表情の変わる日向を見て、正直羨ましいとさえ思った
なんでこんなに素直に感情表現が出来るのだろうか
もし自分がこんなにコミュニケーション能力に長けていたら少しは違ったのであろうか
いつもと変わらないであれば絶対にありえなかっただろう考えに小さくは頭を振った