第9章 君の匂い HQ 日向翔陽
「おぉっ!噂通りのクールビューティーだぜ!」
「それでも俺たちのクールビューティーの女神は潔子さんだっ!」
おぉ~っと勝手に盛り上がっている田中と西谷を尻目に澤村は最初に声をあげた月島を見る
「でもなんでまた月島はそんな話を蒸し返すんだ?珍しいな」
「あ~っまさか月島興味沸いちゃった?」
茶化すように肩を組もうとする菅原をさっと避けて月島は口を開いた
「別に、ただ知りたいと思ったんじゃないかなぁって」
誰に言ったかは分からないように口にすると月島はスタスタと先を歩いた
「?なんだぁ、アイツ」
「さぁ?ただ聞いて見たかっただけじゃね」
首を傾げながらも帰り道をゾロゾロと歩く部員達の後ろで日向だけがギュッとカバンを無言で握りしめていた
* * * * * * * *
最初に出会ったのは日向が課題がなかなか終わらなくて提出するまで部活にはいけず
どうにか気分でも変えようと立ち寄った図書室で起こった
教室とは違う静かな雰囲気の図書室では頭も冴えると思ったのに その考えは甘いと改めて思った
いくら考えても唸っても頭にはハテナしか浮かんでこない
日向は机にうっつぷして「もうダメだ…」と漏らした
すると暫くして目の前に椅子を引く音と人の気配に気がつくと
「ねぇ、どこがわからないの?」
と頭上から綺麗な声が聞こえた
その声に慌てて顔を上げるとふわっと本の香りがしたような気がした
それから有無を言わさない様に分からない課題を教えてくれる
その姿に最初は戸惑いを隠せない日向だったがの丁寧な教え方にいつの間にか真剣に聞き入っていた
日向に教える声もまた心地よくて聞き入ってしまっていた
分かりやすい説明に日向は「わかったー」とはしゃげば自分の役目は終わったとばかりに席を立つ姿に思わず声をかけていた
「俺に勉強教えて下さい!」
「駄目」
あの時の嫌そうな顔は忘れない
それと同時にまだ見ていたいと思った