第9章 君の匂い HQ 日向翔陽
「お前ら、ダラダラ部室で騒いでる暇があるなら走るか?」
にっこりと微笑みながら言ってるのにその笑ってる顔の奥にあるものが怖くて部員たちはヒュッと声を止める
「や…やだなぁ、大地 ちょうど向かおうと思ってたんだよ、な?お前ら」
菅原の声にブンブンと首を縦に降る部員に澤村はじろりと見回すと「早く来いよ」と言って去っていった
残された部員はほぅっと安堵のため息を付きながらもゾロゾロと部室を後にし出した
「ん?何やってんだ日向、早く行くべ?」
ふと 菅原はぼーっと何か考え込んでいる日向に声を掛けた
「あっ!スイマセンっすぐに行きますっ!」
はっと気が付いたように慌てて出ていく日向の後姿を無言で月島は見つめていた
あの時日向はと言う名前にビクッと過剰に反応したのを月島は見逃さなかった
「ふーん、日向の癖に何か隠してるよね」
そう呟いて月島はニヤリと笑った
* * * * * * * *
部活が終わり、いつもの様に澤村が奢ってくれるというので今日はジュースを奢って貰った
帰り道をゾロゾロと帰っていると 突然月島が澤村に話を振ってきた
「大地さん、なんで『図書室の君』が誰だか分かったんですか?」
ブッとジュースを吹き出しそうになった日向の前で澤村はう~んと唸った
「いや、俺の勘違いかもしれないよ、ただ同じクラスにお前らが言ってるように ずっと本は読んでる奴はいるんだよ」
「あぁ、そうだね 大地の言う通りその子いっつも本読んでるし 笑ったりあんまり話さないな」
思い出したように話に入ってくる菅原に澤村はうんうんと頷く
「彼女、見た目が見た目だけに良く話し掛けにいく男達いるんだけど あまりの塩対応に心をへし折られる奴が多いな」
彼女は今時何も手をいれてないような黒い髪を腰まで伸ばしてあまり外に出ないのであろう その顔は日に焼けてない真っ白であった
だからこそ彼女の真っ直ぐな目や赤い唇が一層際立っていた
「俺は絶対笑ったら可愛いと思うんだけどな~ 大地もそう思うべ」
「え?あぁ…整った顔してるから笑ったら綺麗だと思うが…彼女笑わないから分からないな」
ガコンと空になった缶を投げ入れながら聞いてくる菅原に澤村はははっと笑った