第9章 君の匂い HQ 日向翔陽
その頃バレー部の部室では日向のチームメイトが各々着替えていた
「なぁ、最近日向遅くねぇ?」
モゾモゾとユニフォームに着替える3年の菅原は周りにいたチームメイトにそう漏らした
「確かに…あのバレー馬鹿が遅れるなんて天変地異かもですね」
「ツッキー、またそんな言い方して」
同じように着替えていた月島がそう言うと慌てたように山口が制す
「影山、お前何か知らないの?」
くるっと顔を向けて聞いてくる菅原にふるふると首を横に振りながら影山は「いや、知らないっす」とだけ返した
するとバタバタと慌てたように部室に駆け込んでくる日向の姿があった
「間に合ったぁぁ!」
ゼハゼハと息を切らしながら入ってきた後輩に
「嫌、ギリギリだべ早く着替えちゃいな」と笑いながら声を掛けた
日向は「うっす!」と頭を下げて慌てて着替え始めた日向の後ろでコソコソと何かを話している田中と西谷の姿があった
「ん?お前ら何話してんの?」
話の内容が気になったのか菅原がそう聞くと田中は食いぎみに菅原に話した
「菅原さんっ!菅原さんは知りません?『図書室の君』!」
「はっ!?」
いきなりの田中の言葉に菅原は言葉に詰まった
「何ですか、その捻りのない呼び方」
「うるせぇ!みんなそう呼んでるんだよ」
月島のあきれた声に田中は吠えるように噛みついた
「いつも図書室で本を読んでいて、話し掛けてもそっけない態度がまた麗しい」
「俺も聞いた事ある!あまり話さないし声を聞くのも珍しいんだよな?なんか教室でも本読んでて笑った顔見たことないとか」
「くぅ~っ高嶺の花かよ俺が笑わせてぇ」
「先輩じゃ無理でしょ」
「何をぉっ!じゃあ月島なら出来るってのかよ」
「興味ないんで」
ぎゅ~っと両腕を抱き締めて身悶える田中の様子にフッと鼻で笑うように言うと月島はバタンとロッカーの扉を閉めた
「…その『図書室の君』って3年のだろ」
「澤村さんっ!」
声のする方を見るとキャプテンの澤村が腕を組んで入り口で仁王立ちしていた