第9章 君の匂い HQ 日向翔陽
「えっ・・・あの・・・・」
何が何だか分からないというような日向には淡々と告げる
「君の唸り声、凄く良く聞こえる。教えてあげるからちゃんと聞いて」
トンっと広げられた教科書を指差しながらどこ?と目で訴えると慌てたように日向は「こ・・・ここ!」と指差した
「あぁ、ここは引っかかりやすいの。だからこう・・・・」
そう言いながら丁寧に説明していく様子に日向はふんふんと時折質問をしながらも理解はしてくれているようだ
良かったちゃんと教えられているみたいだ。日向の様子にはほっと息をつく
あまり人に教えることはそうそうないから少し心配だった、だけどこの様子だと杞憂だったようだ
「わ・・・・わかったー!出来た」
嬉しそうに教科書を掲げて嬉しそうにする日向にはガタッと立ち上がった
「そう、それなら良かった。それとここは図書室なんだからあんまり大きな声を出したら駄目よ?」
言いながらカウンターへと戻ろうとするに日向は慌てて頭を下げる
「あのっ!ありがとうございました!俺、1年の日向翔陽って言います!」
「別に、そこは昔習ってて覚えてただけだから。・・・3年の」
そう、そこは1年の時に自分も良く躓いていた所だったから覚えてて教えられただけだ ただそれだけ
「先輩だったんですねっ!だから教えてくれたんですね、ありがとうございます」
「別に・・・」
キラキラとした目を向けてくる日向はとても眩しかった ただは図書室の静かな空間が戻るならと思ってしただけの事だった
「それでっお願いがあるんですけどっ!」
教科書を握りしめて見つめてくる姿に嫌な予感しかしない
「俺に勉強を教えてくださいっ!」