第9章 君の匂い HQ 日向翔陽
「先輩っ!こんにちはっ!」
バタバタと急いだように飛び込んでくる人物にと呼ばれる人物は読んでいた本をゆっくりと閉じてため息をつく
「…日向くん、何度も言ってるけど ここは図書室なんだから静かにしてって言ったよね?」
ため息をつかれた日向翔陽は「いけねっ」と口を押さえながら図書室の入り口にあるカウンターに1人座るに近づいた
「ねぇ、先輩。俺に勉強教えてよ」
そう言いながらカウンターに頬杖をつく日向にふいっと目を逸らした
「駄目、前にも言ったでしょう この前のは気が向いたからだって」
「だって先輩の教え方ってすげー分かり易かったんだもん」
パタパタと足を動かす日向にはどうしようかと思っていた
こんな状況になったのは1ヶ月程前に遡る
いつものようには図書室を開ける
昔から本が好きで委員会も図書委員になるのは当然で放課後は当たり前のように足を運んでいた
そんな時により早く図書室に居座る人物に気が付いた
その人物はムムムという唸り声をあげながら広げた教科書と睨み合っていた
その様子をチラリとは見るが、さして気にも留めずにいつもの定位置、カウンターの椅子へと腰を下ろして読みかけの本を開いた
数分は本に集中はしていたが時折聞こえる唸り声にどうにも集中できなかった
視線をその原因へと向けると いつのまにか机にうっつぷして「もうダメだ・・・」とボソリと呟く声が聞こえた
その声には無言で立ち上がり、声のする人物の下まで近寄り ガタっと椅子を引いて目の前に座ると小さな声で声を掛けた
「ねぇ、どこが分からないの?」
急に聞こえた椅子の音と綺麗な女の子の声にガバッと顔を上げた人物、いや少年は心底驚いたような顔をしていた
それが日向翔陽だった