第5章 書庫での出来事
一方で安土ではーーーー
「やはり乃々が春日山城にさらわれたのは確かなようです」
光秀から信長に報告されると秀吉が声を荒げ、拳を床についた
「なんだと!!」
「信玄の野郎…」
政宗が唇を噛み締めると、蒼い隻眼の瞳が揺れる。
「乃々様…さぞかし心細いでしょうね…」
「乃々…俺が一人で城下に行かせたりしたから…」
心配する三成の横で、家康が俯向き静かに拳を握りしめた
「春日山城から今の今まで報せがないということは、乃々は当分無事であろう。貴様ら、乃々、一人の事で何をそんなにうろたえておる。信玄の挑発に乗れば思う壺だ。今はまだ忍べ」
その様子を見ていた信長が脇息にもたれ言う
「時が来れば、その時は思う存分思い知らせてやれば良い。織田の姫をさらった事を後悔させてやるわ…」
余裕にみえる信長からは、怒りに満ちた殺気が静かに放たれていた
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