第29章 過去へ
「強者の覇権で弱者が食い物にされるなら、俺はその抑止力になろう」
「抑止力…?」
「平たく言えば、小国同士で協力し合って、大国に太刀打ちできる仕組みを作ろうと思う。表舞台を退いたからできる裏工作も、たくさんあるしな」
信玄様は……どこまでも、懐の大きな人だ。周りの幸せばっかり考えてきた人生を、これからも貫こうとしてる
「ま、言うのは簡単だが、実現させるのは難しいってやつだ」
信玄様なら…言ったことを全部実現してしまうだろうな
「信玄様ならできますよ、きっと…。私もできることがあれば、お手伝いします」
「ありがとな」
でも………
信玄様の生き方は、強くて、かっこよくて……だからこそ、実は危うい。
自分を犠牲にしてまで、他の人に尽くしてしまうから…