第2章 春日山城の人質
あまりの出来事に呆気にとられてると
先程の女中さんが戻ってきて、私を見て笑った。
「乃々様…すっかり信玄様に気に入られてしましましたね。」
女中さんが私の身体をおこし、お水を差し出してくれる
それを受け取ると、今度は自分で一気に飲み干した
「信玄様…」
ポツリと呟いて、女中さんにもう一度器を差し出す
「はい。あの方は武田信玄公で、ここは春日山城。上杉謙信様のお城でございます」
器にお水を注ぎ、私に手渡しながら女中さんは微笑んだ。
甲斐の虎と越後の龍…
安土で聞いた名前を思い出す
私……信長様の敵に拐われたってこと?!
現実を知って青ざめる
ど、どどどどうしよう…
そんな私の顔を見て、何かを察したのか
「そんなお顔なさらずに…信玄様は女子(おなご)には優しいので、悪いようにはしないとおもいますよ。」
「でも私…人質ですよね……」
「乃々様が倒れられた時、信玄様が血相を変えて抱えてこちらまでお連れしたんです。
それに乃々様がお目覚めになられるまで、それはもう小まめにご様子見にいらして…たいそうご心配なさっていたんですよ。」
そこまで言うと、フフッとちょっと顔を赤らめ
「それに先程もお水を飲ませてくれていたではありませんか」
女中さんが私を見て笑った。
「!!!!!!」
青ざめた顔が一気に紅潮するのが自分でも分かる
「ではお水こちらに置いておきますね。私はお食事の方を見て参りますので。何かあれば外に居る者にお申し付け下さい」
赤くなった私を見て、女中さんがもう一度クスッと笑うと部屋を出て行った