第2章 春日山城の人質
「…ん……。」
なんとも言えない最悪な気分で目が覚める
「乃々様!乃々様!大丈夫ですか?」
枕元から見たことのない女の人に声を掛けられた
「だ…誰……?」
身体も頭も痛い
喉がカラカラで声が掠れる
…大丈夫なわけない…
起き上がろうとするけど力が入らず、力なく頭を降ろす
「乃々様、まだご無理なさらず寝ていて下さい。
ただ今、信玄様をお呼びいたしますね」
信玄様…??
ここ…どこ……??
まだ頭が回らない
女中さんらしき女性が部屋を出て行くと、誰かに声を掛けた
「乃々様がお気づきになられました。」
「そうか」
そう返事をしてスッと襖を開けたのは武田信玄だった
信玄が私の枕元に座り込み
「お目覚めかい。お姫様」
ニッコリ笑う
「全く無茶なことをするお姫様だ。
ここまでほとんど飲まず食わずで来たなんて」
その顔は安土城下で会ったときと同じ笑顔だ
「可哀想に…、美しい唇が渇いてしまってるじゃないか…」
最低限の水分しか取っていないため、唇がかわききっている
唇だけじゃない、身体全部が水分を求めてる