第1章 甲斐の虎
家康の部屋の前まで来ると、独特の香りが香っていた
クンクン小さく鼻を鳴らす
漢方かな?
部屋に入ると小さな引き出しが沢山付いてる大きな箪笥があり、その横にある机には煎じ器や書物が沢山置いてある
「わぁ…」
漢方かー!
少しは知ってるけど、ほとんど知識にないもんなぁ
「桂枝(けいし)シナモン、甘草、生姜、芍薬、葛根…」
ブツブツ知ってる漢方の名前を挙げる
「へぇ…。あんた本当に医学の勉強してたんだね」
家康は少し驚いたように目を丸くした。
「うん。でもこの時代で私が使える技術はあんまりないかも…。機械…道具がないと検査できないし、薬も全然違うから…」
戦国時代に点滴や抗生物質など勿論あるわけないし
レントゲンやCT、医療機器もあるわけないもんね
また学生に逆戻りの気分だ
勉強ばかりの毎日を思い出すと、憂鬱な気分に襲われるけど
今は、後ろ向きなことばかり考えていても仕方ない。
漢方は前から興味あったし!!
ここでみっちり覚えていつか現代に帰れたら、それはそれで役に立つよね!!
前向きになれるかも!!
うん!!頑張ろう!!!
小さく胸の前で拳を握ると
「御指南よろしくおねがいします!!」
憂鬱だった気持ちを振り払い、満面の笑みで家康に頭を下げた。