第23章 最後の戦い
「信玄がお前のことを気に入っていることは、知っている。まだ利用価値のあるお前を安土へ帰したのも、情が湧きすぎたからだろう。信玄が恨んでいるはずの信長と手を組んだのも……私はお前がそそのかしたと踏んでいる。純粋そうな顔をして、大した傾国の女だ」
そんな……!
「違います! 信玄様は…部下をこれ以上、死なせないために、決断したんです」
思わず言い返して、顕如をにらんだ。
「信じられんな。人の恨みとは、そのように浅いものではない」
「っ…元はと言えば、あなたが信玄様を裏切ったのが原因でしょう。同盟を組んでいた相手を裏切るなんて…」
「それがどうした」
え……
能面のような顕如の表情に、言葉を失う。