第22章 裏切りと同盟
ひやりとした空気が流れ、私はぎゅっと手に汗を握る。
「質問に答えようか。俺が和睦を申し入れる理由は…大事な部下たちを、これ以上死なせたくないからだ」
信玄様……
「–––今さらだろ。あれだけ獰猛に俺たちを攻め立てておいて」
感情を押し殺した声で、家康が口を開く。
そうか…家康は、前に信玄様に追い詰められた…って言ってたから、簡単には受け入れられないんだ…
「戦えば犠牲が出ることは承知の上で、皆、ついて来てくれた。だが、顕如の裏切りで事情が変わった。このまま三つ巴の争いを続ければ、勝てはしても被害が甚大になりすぎる。」
信玄様が信長様をまっすぐに見つめ話を続けると
「貴様と顕如はかつては友だったはずだが…」
信長様は猜疑の目で信玄様を見つめ返した
「俺は、復讐に身を焦がす余り、大事なものまで見失うのは御免だ。……顕如のように」