第22章 裏切りと同盟
『…俺には、かつてひとりの友がいた。生真面目で、頑固で、優しすぎるほどに優しい男でな。
その男は戦で仲間を失い、今はもう復讐に身を焦がす鬼となった
そんな優しい男までをも信長は…地獄に落し鬼へ変えてしまった。』
前に川辺で聞いた話を思い出す
前に話していた友達って…顕如のことを言ってたんだ…
複雑な想いを噛みしめるように呟いた信玄様
……裏切った顕如に対して、怒ってるだけじゃなくて、哀しんでるみたい
「戦わずして甲斐を取り戻す方法があるなら、俺をそれを取りたい」
信玄様は、これ以上、犠牲を出したくないんだ
「甲斐は織田の統治下にある。貴様の望みはそれを奪取することか。和睦というには、こちらに利のない条件だ」
信長様の言葉にそう言われるのがわかっていたかのように、信玄様は間髪入れず切り替えした。