第20章 貴方のもとへ
「君がこの戦場に来ていることは知ってた。敵陣の情報を集めることは、戦の基本だからな。もっとも、こうして夜這いをかけられるとは露ほども思っていなかったが」
「ふざけないでください」
「閨の睦言なら、いくらでもお話ししよう」
真剣な私の眼差しを避けるように、ふざけた言葉ばかり発する信玄様を睨む
「あなたの病気が治ってないってこと、聞きました。今日、戦場で血を吐いたことも」
「……。そうかー。ばれたか」
わずかな沈黙のあと、信玄様は何でもないことのように、あっさりと認めた。
「それで、君は何をしに来た。陣中見舞いに口づけてくれるのか、安土の姫君」