第20章 貴方のもとへ
「佐助くん!」
辺りを見回し、声をひそめる。
本当に来てくれた…!!
危険を冒してまで、約束を守ってくれた佐助くんが私には救世主に見えた
笑顔の私とは裏腹に佐助くんの表情は硬い
「緊急事態で…急いで来たんだ」
「緊急事態?」
いつも冷静な佐助くんの声が、わずかに掠れた。
「信玄様が、血を吐いた」
「え……?」
ひゅっと息が詰まり、心臓が暴れ出す。
さっき心配していたことが、現実味を帯びて血の気が失せる
「行こう」
私の表情を見た佐助くんが、ぱしっと腕を掴んで引っ張られ
その力強さにはっとして、我に帰る。
「うん……」
早く…早くっ、信玄様に逢いたい
私は佐助くんとともに、織田軍の野営地を抜け出した。