第20章 貴方のもとへ
私は増え続ける怪我人を必死に手当てしていた
中には、もう私じゃ救えない…人も…その厳しい現実に今にも逃げ出したい気持ちをおさえ、自分のできることだけに集中する
あの時ことを思い出して……
薬なくなっちゃった
取ってこなきゃ
ブチッ
「きゃ…」
薬を取りに天幕へ戻ろうと歩き出した瞬間、私の草履の鼻緒が切れて転びそうになる
こんな時に切れるなんて…
草履を脱いで、懐にしまっていた手拭いを出すと一緒に櫛がポトリと落ちた
慌てて落ちた櫛を拾うと…
ザワッ……
どうしてか…無性に嫌な予感に襲われた
「…気のせいだよね」
自分に言い聞かせて、汚れを払って櫛をしまう
手拭いを裂いて鼻緒を手早く直すと、また天幕へ向かって歩きだした。