第18章 別れの時
「ふざけんなっ!…あんただって……」
「ゆーき。」
信玄が幸村の言葉を遮ろうとする
「あんただって……幸せになっても、いいんじゃないですか」
「ゆき。」
「とぼけないでください。昔から、あんたが本気の女を作ったところ、見たことねー。女が惚れ始めたら、わざと突き放す。今回の乃々だって……病のことを気にして、あいつを手離したなら…」
「幸」
「っ……」
真顔で名前を呼ばれ、幸村は声を詰まらせた。
「案外、俺は……本気だったみたいだ」
「信玄様……」
目をみはる幸村に、信玄は儚い笑みを漏らす。
「ガラじゃあねえよなあ。ま、笑ってくれ」
「…あいつ……最後に……信玄様にーーーー
『生き抜いてください』
って……そう言ったんですよ……」
「…っは。なんだ…それっ」
皮肉だな
死にゆく者に生き抜いて、とは
「……これ」
幸村の手には、乃々に渡したはずの火打ち袋……
それと一緒にあの匂い袋が結ばれていた