第18章 別れの時
城に入った幸村は、謙信から受け取った二つの袋を手に信玄の元へ向かった
幸村が部屋に入ると、信玄は机に向かって書きものをしているところだった。
「……乃々、行きましたよ」
「ああ、知ってる」
声もかけずに襖を開けた幸村を咎めるでもなく、信玄は顔を上げて笑った。
信玄とは対照的に苦々しい顔をした幸村は、こぶしを握りしめた。
「…あいつ…泣いてませんでした。」
「…そうか。」
良かった…泣かずに行ってくれたか…
「……分かってたんでしょう?あいつの気持ち」
「幸が女の気持ちを語るときがくるとはなー」
信玄がヘラっと笑って、いつもの調子で茶化す