第18章 別れの時
幸村からそれを渡されると、ほのかに香る甘い匂い
乃々の匂い…
「…俺に生きてほしいと願う女に、もうすぐ死ぬなんて言えねぇよ」
言えるわけねぇ
これから死ぬ俺が…愛してるなんて…
守ってやるなんて…
信玄は額に手をやり、自嘲気味に笑う
「っ…なんで、あんたなんだ。病にかかるなら、もっと別の奴だって……」
「まあ、聞け、幸。俺は、自分が不幸だとは思ってない。お前みたいな部下を持てたし、謙信や佐助みたいな面白い奴らとも縁ができた。あとは武田を再興し、みんなが幸せになれれば何も言うことはねえ」
幸村はためらいながら、信玄に問いかける。