第18章 別れの時
「厳しいな、お前は」
刀を収めた謙信をみて、信玄は自分も鞘に刀を戻す。
その一瞬、不意に大きな体がふらついて……
「く……」
……やべぇ
「……おい、信玄」
「…あー、運動不足が祟ったかな」
「……」
胸の痛みをこらえ血の気が引いた顔で笑う信玄に、今度は謙信が沈黙する番だった。
信玄の瞳に、苦痛を凌駕するほどの覚悟が燃える。
「ありがとな、謙信。ようやく、決心がついた。愉しい戦を–––始めようか」
そうだ…
俺には残された時がねぇんだ
情に流される、この時ですら勿体ねぇ…
「……ああ」
謙信は珍しくためらった後に、あらゆる言葉を呑みこんで、短く返事をした。
姫よ……
別れの時が来たようだーーーーーー