第18章 別れの時
「何かあったから、思い切り暴れたくなったのだろう。太刀筋に迷いがある。この俺が見抜けないとでも思ったか」
「気のせいだ」
あのまま抱いちまえば、何か変わったのか?
昨日の乃々が頭から離れない
つばぜり合って巧みに重心をずらした信玄が、謙信の刀を受け流す。
「気分転換なら女でも抱くさ」
「どうだろうな」
「何……?」
「甲斐の虎が火遊びをしなくなったと、春日山城下では専らの噂だそうだな。そのわりに、乃々の部屋には、足しげく通っているようだが」
女嫌いのお前にすら見透かされるとはな…
「……ふっ。」
苦笑した信玄を、謙信の左右で色の違う瞳が冷ややかに見つめた。
「鍛錬は終わりだ、そのように腑抜けた状態のお前と遊んでも、興がさめるだけだ」