第17章 隠された半月、半分の心
黙って思案していた顕如は、やがて何か思い出したように、にやりと笑みを浮かべた。
「–––良いだろう。その申し出、受けてやる」
「ありがたい」
「……そういえば、お前は信長の女を人質に捕まえているそうだな」
信玄の眉がぴくりと眉をひそめる
「それがどうした?」
「ろくな使い方をしていないと思っただけだ。人質としての使い方なら、もっと有用なものがある。使わんなら私に寄越すが良い」
「断る。妙な気を起こすなよ?顕如」
信玄の瞳が獣めいたように、顕如を睨む
「なんだ、信玄?情でもうつったか?」
薄ら笑う顕如の暗い目が、信玄の心を見透かすように貫いた
「甲斐の虎と第六天魔王を虜にする女がいるとすれば–––それは文字通り、傾国の女だな」
「そんな美人がいるなら、ぜひ口説き倒したいものだ」
「私も是非、その美女に会いたいものだ。」
平然と嘯く信玄に顕如は不適な笑みを浮かべる
張り詰めた空気が、より一層重くなる