第17章 隠された半月、半分の心
「信玄様は寂しくないんですか?」
「情が移ってるから、寂しくないと言えば嘘になるな」
信玄様はあっけらかんとして、肩をすくめる。
「だが、別れが必要な時もある。生きるということは出会いと別れの繰り返しだ」
やっぱりこの人は、強いな
「私には……そんなふうに割り切れる自信がありません」
現代に帰れば、この時代に出会った人たちや信玄様と二度会えなくなる
「どうやったら、別れがつらくなくなるんでしょう」
私の足元でじゃれつく子熊を見つめ聞く
「どうしようもないさ。別れは、いつもつらいものだ」
信玄様は私に、宥めるように言い聞かせた。
子熊に手を伸ばすと抱き上げ、私の膝に乗せる。
「さてと……。もっと君と話してたいんだが、俺はそろそろ支度をしないと」
「どこかへ、お出かけですか?」
「人と会う用事があってな。帰ってくるのは夜になる」
夜か…遅くなるんだ……
もう少し話していたかったけど…
今日はもう会えないかな…
「浮かない顔だな姫。俺がいなくて寂しいか?」
私の顔を見て信玄様が楽しそうに笑う
「そ、そんなことっ…ないですけど…」
もう、うまく自分の気持ちを隠せない…
きっと、大人な信玄様は気付いてるだろう
「そんな表情を見せられたら、おちおち出かけられなくなりそうだ」