第17章 隠された半月、半分の心
「せっかくですが、お気持ちだけいただきますね」
そう言いながら、心が音を立てて軋む
このどうしようもない気持ちを押し殺し、笑顔で答えた
「そうか。じゃあ気が変わったら言ってくれ。」
信玄様もにっこり笑って、あっさり返す
「信玄様…あの、ひと休みしてお茶にしませんか?」
「ん?あぁ。そうだな。お茶にしようか」
二人並んで、縁側へ向かう
…貴方に何か作ってもらえたら、どんなに嬉しいか
本当の気持ちを言えたら……
「今日の甘味は大福か」
信玄様の嬉しそうな顔、この顔をいつまでも見られたら…
「城下でも評判の大福ですよ。鈴ちゃんに買って来てもらったんです。」
「それは、鈴にお礼言わないとな」
縁側の縁に座り、二人で庭を眺めてると
「ん、あれは……」
信玄様が何かに気づき、庭の奥を見つめる
その視線の追うと、木立の中から何か毛むくじゃらの動物がかけて来る