第17章 隠された半月、半分の心
「わ…凄いですね!!これ、信玄様が?」
「ああ。飾り棚でも作ろうと思ってな。大工仕事は、昔からの趣味みたいなもんだ」
そんな趣味があったんだ
また一つ信玄様のことを知れた気がして嬉しい
「でも、家具作りが趣味なんて意外ですね。なんだか、武将っぽくないような…」
信長様の趣味は鷹狩りだし…
謙信様に至っては……鍛錬だろう…
「よく言われる。時々、無性に作りたくなるんだ。
……生きた証でも、残したいのかもなー」
「え?」
今、なんて…?
不思議に思って、その真意を聞こうとすると
「幸や謙信にも、たまに作ってやったりしてるんだ」
信玄様の言葉に遮られた
謙信様にも幸村にも作ってプレゼントするなんて、やっぱりすごく仲が良いんだな
「そうだ。今度、君にも何か作りたいな。何がいい?」
「私に、ですか?」
…嬉しい、けど……
ふと、戸惑いがこみ上げてくる。
日常で使う家具を作ってもらっても……私は現代に帰るから使うことはできない
ワームホール出現までの期限も、気がつけばあとひと月を切っていた。
現代に戻ったら、もう、信玄様とも逢うことはない…