第1章 甲斐の虎
「の、信長様っ!!!!」
手で押し退けようともがくけど、信長様はさらに私をきつく抱きしめた
「今日は大儀であったな…。」
「…え………。」
信長様の言った一言で、この人は私に起こったことを知ってるんだと察した
知ってるんだ…
信長様は私が救えなかったことを気にしてるのを……
知ってて…
抱きしめてくれた暖かい腕の温もりが優しくてーー
その優しさを悟った瞬間、堰を切ったように溢れ出す涙…
「う…うっーーーーーーーー!!!」
救えなかった命…
目の前で消えそうな命に最期まで手を尽くせなかった…
寄り添えなかった
現代なら救えたかもしれない命
だけどこの時代じゃ救えない命…
歯痒くて悔しくて…
悔しい!悔しい!!
やり場のない怒りをぶつけるように
信長様にしがみつくと、私は子供のように思い切り泣いた…