第1章 甲斐の虎
歪んだ視界の向こうに見えた姿…
その一人と一瞬、目が合った…
戦いに生じているのにもかかわらず
私と瞳があってフッ…と口元が微笑んだように見えて
瞳が合ったその人は
あの…ひとっ……?!
昼間に会った色めいた瞳ではなく、今は獲物を狙う獣のような瞳
ドクンッ
昼間と同じように胸が高鳴った
私は家康に抱えられながら、小さくなってゆくその姿をただ黙って見つめた
「越後の龍と甲斐の虎か…。面白い。手合わせ願おうか…」
揺らりと刀片手に立ち上がり天幕から出る信長。
外には龍と虎になぎ倒された兵の山
「信長様ッーーーーーー!!!」
知らせを受けた政宗が主君の危険に駆けつけた。
「今日は挨拶しにきたまでだ…。この決着は日を改めよう。」
甲斐の虎と呼ばれたその男は
信長に不適にと笑いかけ、軍を退いて立ち去った
クックック…
「本当に面白い奴だ。」
立ち去る武田の軍を眺め、信長は肩を揺らし笑った