第1章 甲斐の虎
「何…?何言って…る…の……?」
家康が無言で私の手をグイグイと引いて歩く
「やだ!!!離してってば!!!」
必死に叫ぶ私の声は、家康には届かなくて
「時間ないから!!!黙って!!!あんた死にたいのっ?!」
家康に怒鳴れら、抱えられるように馬に乗せられる
「だ、だって……あの子……」
納得出来ず、まだ抵抗する私に家康が
「助けられないから」
冷たく言い放った
『助けられないから』
その一言に目の前の景色が熱いもので歪む
「今はここを離れることの方が先決。敵が迫ってきてる。」
言い聞かせるわけでもなく、家康は淡々と私に言った。
家康の馬に乗せられ天幕から出ると、すぐそこには武田の軍が迫っていた
その中に兵をバタバタとなぎ倒して行く二人の男の姿が目に入る