第1章 甲斐の虎
「ま、待って…治療がまだ途中…」
さっきの傷ついた若い兵士の方に目をやると、ぐったりとしているけれど微かに呼吸はしている。
ダメ…このまま置いてなんて行けない!!
血の気の引いた兵士の手当てを続けようとする私を家康が制した
「やだ!!やだやだ!!!離して!!!!
やだ!!このままじゃあの子死んじゃう!!!!」
必死に家康の手を振りほどこうとするけど、ガッチリ掴まれた腕が離れない
「乃々…。諦めて。」
家康が低い静かな声で言った
その言葉に、唖然として家康を見る
な…この人…何言ってるの…?
まだ出来ることあるかもしれないのに…
諦めて…って…
それじゃあ…まるで…
見殺し………