第14章 戦の跡
「…大切な物なんだね」
「…そうだなぁ。代々、受け継がれる家宝みたいなもんだからな」
自然と火打ち袋を胸の前でギュッと抱きしめる
信玄様の優しさとあの時の口づけを思い出すと、
胸が熱くなる
「…お前……信玄様のこと好きなのか?」
幸村が少し戸惑い気味に聞いた
「えっ?!」
幸村の直球の質問にびっくりして、思わず幸村を見上げる
「…まさか。私は…織田の姫だよ。。そんなわけないでしょ?今もこの先も、好きになるなんてことないよ。」
自分の気持ちを悟られないよう、精一杯強がって答える
「そっか。お前が信玄様と何もないならそれでいい。……あの人に本気になったら、たぶん後悔するから」
後悔する…?
幸村のその言葉が私の心に引っかかった
「…そうかもね。信玄様、モテるから。好きになる子は大変そー」
あはは。
と笑ってみせたけど
その幸村の一言に色んな意味が込められてるように思えた
「そうじゃねーけど……」
幸村が小さな声でポツリと言って、前をじっと見つめたまま黙る
幸村の姿に言葉の真意が聞けなくて、私もただ前を見つめた