第14章 戦の跡
翌朝、夜が明けると武田軍は春日山城へ帰還した
「なー、乃々」
「何?幸村」
馬袴を使ってしまった私は、幸村の馬に乗せてもらった
「お前…戦の中、逃げようとしたんだって?」
「…っ…本当に…ごめんなさいっ!私のせいで信玄様にも怪我させちゃうし…」
一瞬、言葉に詰まったけど、自分のしたことに精一杯謝った
幸村にとって、主君の信玄様は誰よりも大切な人だ
そんな大切な人が、敵の人質のせいなんかで怪我するなんて許せないよね
幸村のじとっとした視線が突き刺さる
「……んだよ。急にしおらしくなりやがって。別に責めてねーよ」
ひたすら、うな垂れる私を見て、ぶっきらぼうに言う幸村
「…え?」
「お前さー、無闇に戦場なんて走り回ったら、危ねーに決まってんだろうが。お前なんかすぐ串刺しにされるぞ。一応、女なんだからよ…無茶すんな」
幸村…心配してくれてるんだ…
「…幸村が心配してくれるなんて?!うー…なんか泣けちゃうーー!!」
「あっ?!なんだよ!お前になんかあると、鈴が泣くだろうがー」
ん?鈴ちゃん?
あれ?この前の人質の時にも、鈴ちゃんが心配してるって言ってたなー
そういえば、信玄様にも好きな人いる風に言ってたよね…?