第14章 戦の跡
「少し、真面目に喋りすぎたなー」
信玄様は、手を伸ばして私の髪をくしゃりと撫でた。
「……あなたが死ななくて良かった。信玄様のことがわからないまま、死なれてしまったら、きっと一生、後悔してました。」
「乃々……」
信玄様の本心に初めて触れた気がして、笑顔で喜ぶ私。
信玄様は思い切って口にした私の言葉に、少しの間だけ呆気に取られていた
「助けていただいたお礼に、私にできることがあったら言ってください」
「へーえ」
あ、しまった……
「そんなことを言っていいのか?」
途端に悪い笑顔を浮かべる信玄様を見て、冷や汗が滲んで思わず私は後ずさる
ニヤニヤと私を見つめる顔は、いつもの信玄様だ
「で、できる範囲でお願いします……」
「じゃあ、ひとつ約束をくれないか?」
「約束?」
「春日山城に戻ったら、また、俺と月見をしよう。天女と月を眺めれば、傷の治りも早くなりそうだ」
思わぬ提案に、私は目を瞬かせた。
前のお月見の時は、まだ信玄様のこと全然分かってなかったな
今なら…もう少し信玄様を知ることができるかも…
「…わかりました。お月見、しましょう」
本当の…信玄様をもう少し見てみたいから……