第14章 戦の跡
大きな手にひかれ、私は信玄様の天幕へ入った
「やっと二人きりだなー。もう少し雰囲気のあるところなら、君に愛を囁き、朝まで愛でたんだがな〜」
「またっ!お願いですから、ちゃんとお礼をさせてください!!」
にやにや笑いながら、私を揶揄う信玄様は戦に行ってた人とは思えない。
このままだと、信玄様のペースに乗せられてお礼もちゃんとできない
「わかった…。じゃあ君は俺の膝に座ってくれるか」
「信玄様!」
本気で怒り出した私に、信玄様が首をすくめて観念したように座る
「はは。俺の天女は怖いなぁー」
「信玄様っ!」
そして私の鬼の形相にとうとう黙った
信玄様が黙ったのを確認したところで背を正すと、手をつき深々と頭を下げた
「私を助けていただきありがとうございました。信玄様がいなかったら、私はここにはいなかったでしょう。そのせいで、怪我をさせてしまってごめんなさい。……それと…取り乱してしまったことも……」
あの時口づけされたことを思い出すと、下げた頭があげられなくなった
どんな顔して、信玄様を見ればいいのか分からない