第1章 甲斐の虎
そこへ信長様が待機する天幕へ、兵士が息を切らしてやってきた
「信長様っ!!!大変です!!!」
「何だ。」
鉄扇片手に悠々と答える信長様
兵士のただならぬ様子に手当てをしていた家康が手を止めて、信長様の方へ向かう
「た、武田の軍がこちらに向かっていると報せが!!!」
兵士の顔は、まるで亡霊でも見るたかのように顔面蒼白だ
「ほぅ…甲斐の虎が生きていたと言う噂は真であったか。」
面白そうに笑う信長様の声に
甲斐の虎?といえば
武田信玄?
手当てを続けながら、脳裏に一瞬浮かんですぐ消えた。
「家康…。」
信長様が家康を呼び、チラッと私を見た
言わずとも分かりましたと家康が私の手を引く
「乃々!!行くよ!!」
「え…?!」