第13章 戦の駒
しばらく走ると、戦場の喧騒が遠のく
「君はここにいろ。あとで迎えをよこす」
「…待って!」
信玄様が私を馬から下ろすとそう言って、すぐに馬に乗ろうとするのを腕を掴んで引き留めた
「…俺はもう一度戦場へ行く。頼む。大人しく待っていてくれ」
懇願するように言われるけど、腕を離さなかった
「手当てを…止血だけでもさせてください!」
このまま行かせるわけには行かない!
信玄様が私の顔をまじまじと見つめ
手当てさせないと離してはくれないと察したのか、諦めたようにその場に胡座をかいた
甲冑の袖と鞐(こはぜ)を外すと
直垂(ひたたれ)が赤く染まっている
「少し痛いですが、我慢してください」
そう言って、持っていた手拭いで傷口を強く押さえた
圧迫して血が止まったのを確認すると
小袖から片腕を抜き、汚れていない中の襦袢の袖を引きちぎる。
それを手早く畳んで充てると、今度は馬袴を躊躇うことなく脱いで裂いた。
それで傷口を覆うようにキツく縛る
馬袴を脱いでも、中は小袖を着てるから問題ない
そう思って私は一連のことをやったのだけど、
恥ずかし気もなく、堂々を馬袴を脱ぐ姿に信玄様は呆気にとられていた