第13章 戦の駒
家康っ?!
目を凝らして、黒い波をもう一度見つめる
すでに黒い塊の中に飲まれたのか、もう何も見えない
家康がっ…いる!!!
そう思った瞬間ーーーー
私は馬のお腹を蹴り出していた!
「乃々様っーーーーーーーーーー!!!!」
馬を引いていた兵の叫び声を振り切り、馬を走らせる
その兵の叫び声に、戦の中心へ向かおうとしていた信玄様も私に気づき叫ぶ
「乃々っ…!!!戻れっ……!!」
「-------家康っ!!!」
大声で叫ぶ私の声は怒号に掻き消される
安土にいた時、政宗から馬の乗り方を少し教えてもらっていた
でも、こんな風に走らせるのは初めてに近い
普通だったら怖くてできなかっただろう
だけど、今は違った
一瞬、見えた気がした家康に会いたくて…
無事を知らせたくて…
夢中で駆け出していた