第13章 戦の駒
身体に電気が走ったような感覚がして
頭の中が真っ白になる
その口づけで
身体の震えも
涙も
思考回路も飛んだ
唇が離され…呆然とする私
「…し…信玄…さ…ま?」
「乃々…」
私の目に生気が戻ったことを確認すると、信玄様はほっとした顔をした…
その時ーーーー
「敵襲ーーーーーーー!!」
外で斥候が叫ぶ声が響き渡る
「ーーーーー!!」
「……信玄様っ!」
その声に恐怖で信玄様を見上げる
転がるように走り込んできた、斥候が叫ぶ
「織田軍の夜襲です!およそ千を率いて山を下っております!!」
「…早すぎる……まさか」
信玄様の顔が何かを察すると、険しくなった
「率いているのは誰だ」
「織田信長です!」
斥候の答えに信玄様が不適な笑みを浮かべる
「面白い…信長、自ら姫を奪い返しにきたか…」
さっき私を抱きしめてくれた信玄様はもうそこにはいなかった…
そこにいるのは復讐に駆られた、一匹の虎…