第13章 戦の駒
あの時、目の前で起きたことを思い出し恐怖にかられる
パニックになる寸前……
「乃々?!」
私の異変に気付いた、信玄様が駆け寄った
ガタガタと全身を震わせる私を信玄様が抱き寄せる
「どうした?!乃々っ!」
ボロボロと涙が溢れる。
私のただならぬ様子に、私を天幕へ抱き抱えて連れて行く
「乃々っ!!乃々っ!!どうした?!しっかりしろ!!」
信玄様が私の肩を揺さぶる
信玄様の声に、震えながら答えた
「……ったし……わた…し……彼を…救えなかった……」
両手からすり抜けて行った彼の命……
医者を志して、人を救うために頑張ってきたのに…
彼の命は、いとも簡単に私の手をすり抜けていってしまった
彼を置き去りにした自分の両手を呆然と見つめる私…
その手は見えない血に塗れている