第13章 戦の駒
「やあ、乃々。」
「………」
「口もききたくないか」
信玄様が参ったと頭に手をやり笑う
「幸、姫の護衛ご苦労さん。」
「ほんとっすよ。俺までじろじろ見られてんですから」
「まぁ、そう言うな。美人を守れるなんて役得だろう」
鬱陶しそうな顔をする幸村を見て、楽しそうに笑う。
これから戦に行くって時まで笑って
あの日のことなんて何も気にしてないみたい
結局、あの日以来信玄様と顔を合わせることはなかった
嫌いになれたら何どんなに楽だろう…
何度も頭から消し去ろうとしても一度芽生えてしまった恋心は、そう簡単になかったことにはできなかった
どんな顔して信玄様に向き合えばいいのかわからない…
チラッと信玄様に目をやると、バチっと目が合った。
「なんだ?乃々、疲れたか?」
慌てて逸らす私に優しく微笑む信玄様。
「…あっちの田んぼを見ただけです。」
「…すっげー苦しい言い訳、初めて聞いたわ」
前を見据えて、澄まして答えると幸村がボソリと呟いた
「い、言い訳じゃない…っし」
あはは
と信玄様が笑いだし、私の方が結局、調子を狂わされるのだった