第13章 戦の駒
エ?
イクサノコマ?
「君を戦場に連れて行き、織田軍を引きずり出す。」
何の感情もないような、信玄様の話ぶりに愕然とする
「織田軍は、不利な戦いであっても君のためなら正面から打って出るほかない。だから君を利用する。」
そんな…?!
私を餌にして、信長様たちを不利な状況にするってこと…?
信玄様へ抱いていた恋心が、色褪せてゆく感覚に襲われる
私が…好きになったのが間違いだった…
この人は…結局、敵で………
私はただの…人質だったんだ……
「信玄様らしくもない…そんな卑怯な手で勝って嬉しいですか?!」
「俺…らしいか…」
自分の気持ちを悟られまいと精一杯強がる私に、ふっと信玄様が笑う
「別に勝とうとは思ってないさ。俺の狙いは、織田軍を消耗させて士気を下げることだ。君がこちらにいる限り、主導権は俺にある。有利な日取りと場所で、何度も戦を仕掛け、反撃される前に引くのを繰り返す」
もうそこに、そこに私の好きな人は居なかった
いるのは、復讐の業火に身を焼かれた、ただの男…
「そんな…じわじわ追い詰めるようなこと…。せめて…せめて正々堂々と戦えばいいじゃないですか!!!」
「…君が戦を肯定するとはな。」
「肯定なんてしてません。私は信玄様のやり方が気に入らないだけですっ!!私は…私は…あなたは…ちゃんと信念があって戦っていたと思ってたから…」
裏切られたようで悲しかった
自分が思ってた人と違う…
いや、私は何も知らなかっただけなのか…
勝手に分かってた気になって…
最初から…何もわかっていなかったんだ…