第11章 城下の逢瀬
「この場所から…あの町を見るのが好きなんだ。
人々がみな、活気に溢れ幸せそうで…
甲斐の国とも、少し似てるからかもしれないな…」
甲斐の国…
「信玄様の…国ですね…」
「あぁ…。今は織田の統治下に置かれてるがな……」
そっか……信長様が勝ったから…
「信玄様の国は…どんな国だったんですか?」
「そうだな…」
少し目を細めて懐かしむように語る信玄様は、今はない故郷を思い出すように遠い目をしてる。
「海がなくてなー。でも河では魚がよくとれたよ。周りは山々に囲まれていたから、米の収穫が少なくて…
裕福な国ではなかったな。
しかしその分、みんなで力を合わせて俺についてきてくれた。」
『みんな』……その人たちは…信長様に負けたあと、どうしてしまったのだろう…
戦に敗れた国のその後の運命を考えると、軽率に聞いてしまったことを後悔した
自分の国を…大切にしている人たちを失くす気持ちは…どんな気持ちだったんだろう…
想像もつかないことに何も言えず黙り込む