第11章 城下の逢瀬
信玄様の案内で、まずは信玄様行きつけの団子屋へ入ると、なれた様子で主人に注文する。
「主人。とびきり美味い団子をたのむ」
「おや。信さん。久しぶりだね〜。今日はまた、可愛いお嬢さんを連れて。相変わらずのモテ男だねぇ」
愛想のいい主人が私を見てニコニコ笑うのを見れば、信玄様が色んな女の人を連れて来てるのが容易に伝わった。
主人の余計な一言に、「お?おぉ…」と、信玄様がチラッと私に視線をやるのを感じたけど、私は笑顔で主人の言葉と信玄様の視線を受け流した。
信玄様にとっては、私はその他大勢の一人なんだろうな
分かってはいるものの、改めて考えると胸の奥が軋む
主人が運んできたお茶と団子、団子の一つをパクッと頬張る
「美味しい…」
「そうだろう?ここの団子は店で食べると格別に美味いんだ!
乃々に食べさせてやりたくてなー」
嬉しそうな信玄様を目の前に、最後の一つを頬張ると
「乃々。ついてるぞ」
私の口の横についた、みたらしをすくいその指をペロリと舐めた
ドキッとしたけど…
ふ、と思い出す
安土の団子屋でもこんな場面あったな…
この人は…いつも変わらずこんな調子なのかな
誰にでも優しいの…?
そう思うとなんだか切なくなった…
でも…なぜ切なくなるのか…その理由を私は見つけられない
「さて、次に行こうか」
信玄様が勘定を済ませると、当たり前のように再び手を繋いで歩き出す
繋がれた手が、特別のような気がしてちょっぴりくすぐったい