第11章 城下の逢瀬
町についても部屋でのことが、いまだに気まずい雰囲気にさせている
信玄様が私を馬から私を下ろすと、馴染みの宿屋に馬を預けた
「…沢山お店ありますね」
ここまで会話らしい会話をしてないので、どこかぎこちない。
「でも…本当に二人だけで来て良かったんですか?」
お供の者は誰もいなかった。
「美女との逢瀬にむさ苦しい男がついてくるなんてごめんだね」
信玄様がそれは勘弁と首を横に振る
「…逃げるかもしれませんよ?」
「そうか…美女に逃げられては一大事だな。何か策を考えねば……」
企み顔でいう私に信玄様は笑うと、顎に手をやり少し思案する。
「では、逃げ出さないように、しっかり捕まえておかないとな」
私の手を握ると、悪戯に片目をつぶる
信玄様の手の温もりが私へ伝わり、その温もりが熱へと変わった
顔が紅潮し始めるのがわかって、思わず俯いた。
「さ、行こうか。」
少し前行く信玄様に手を引かれ歩く
視界を落とせば、繋がれた手が視界に入る
初めて男の人と手、繋いで歩いた…
これって…まるで……デート?みたい??
そう思うと、心臓がさらに高鳴る
「乃々。何か見たいものはあるか?」
信玄様の問いに顔をあげ、まわりのお店を見回すけど、繋がれた手の熱さと緊張で頭が回らない
「く…薬屋さん…??」
やっとの思いで口から出た言葉は、色気も可愛い気もない言葉だった
その答えに、思わず振り向いた信玄様は目を丸くしてる
だって……デートなんてしたことないし…
そもそも…時代だって違うし…
映画とか遊園地とか…定番デートスポットなんてないじゃん!!!!
「…ぶっ!…はっ!!はははは!!!!」
「だ、だって……」
吹き出して豪快に笑う信玄様に
言い訳を探そうとするけど、上手い言葉が見つからない
「乃々は本当に可愛いな。一緒にいると飽きないよ。おいで、俺が色々連れて行ってあげよう」
涙を流して笑っていた信玄様が呼吸を整えると、再び私の手を引き歩きはじめた
気まずかった雰囲気も、いつの間にか消えていて
そのことにほっとする