第11章 城下の逢瀬
空が夕闇に包まれた頃、信玄様が約束通り迎えに来た
鈴ちゃんに信玄様と城下町に行くと言ったら、なぜか鈴ちゃんが張り切って小袖を用意してくれた
少し元気がなかった私を元気づける気持ちもあったんだろう…
信玄様が好んで着る、代赭色(たいしゃいろ)の着物に合わせた緋色の小袖。
鈴ちゃんが言うように少し黄色かかった赤色が、代赭色の羽織にはよく合った
なんだかお揃いみたいで少し照れ臭い
迎えにきた信玄様も私を見ると、少し驚いて…でもすぐに
「…似合うな」
と呟いて、私を連れ出した
「馬で行くんですか?」
「あぁ。春日山は山にあるからな。暗いと足元も危ないし、なんと言っても疲れる。」
馬小屋から一頭、馬を引き連れてくるとひらりと跨がり、私に手を差し出す
少し躊躇ったあと、手を伸ばすと私を一気に引き上げた
信玄様に抱えられ馬に揺られる中、心臓の音だけが頭の中で鳴り響く…
会話がないまま馬に揺られていると、春日山の城下町が近づいてきた