第10章 嫉心
「え…?」
「君が無事だとわかれば、信長への牽制にならなくなる」
信玄様の笑みは消え、私を見つめる冷たい瞳
そこにいつものふざけた信玄様はいない
いるのは威厳を携えた武将の姿
この人は……やっぱり敵なんだ…
その姿に改めて思い知らされる
「君は…どうしてそんなに信長に肩入れするんだ?」
信玄様が怪訝な顔で私を見据える。
「君をここに連れてくるのに、君のことを調べさせてもらった。」
「……!」
私のことを…?
「君は…突然織田家にやってきて、すぐに織田家ゆかりの姫になっている。
織田家の姫とは建前だ…どこから来たのか、どこで生まれたのか…三ツ者に調べさせたが、君のことは全く分からなかった。」
信玄様が私を見透かすように見つめる。
「君は…何者だ?」