第10章 嫉心
しまった!
口を両手で覆う
「乃々…。今、笑ったろ?」
「?なんのことですか?私、笑ってませんけど?」
「いーや。今、確かに笑った。」
しらを切る私に、ニヤリと笑う信玄様がジリジリと近づく
「…あ!佐助君では?天井裏にいるのかも…」
そう言って天井裏を見上げると
がしっ!と信玄様に両手で頬を挟まれた
「賭けは俺の勝ちだ」
「…し……しんげ…ん…さ…まっ…」
獲物を捕らえたような目で見つめられるけど、両手で顔を挟まれて目をそらすこともできない
「約束だ…。君の全てを奪う…。」
「えっ……?!やっ……」
抵抗出来ずにいた私の額に口づけがおりてきた
額に落とされた口づけに驚いて見上げると、信玄様が優しく微笑んでいる
「これで君の全てをもらった。賭けはおしまいだ。」
「え…?」
「君の笑顔をもっと見たくなった。安土へ戻る機会を奪うのは心苦しいが。勘弁してくれ。」
「そ、そんな…。」
戸惑う私に少し困った顔の信玄様
それじゃあ…私はもう安土へは帰れないの?
ふた月後には現代へ帰るのに…
みんなにお礼も言えないなんて…
「…では…せめて文だけでも書いてはダメですか?」
「………文か。」
信玄様には少し考えると、「ダメだ。」と却下した。