第10章 嫉心
「女子を見て口説くのは、男としての使命だろう。むしろ口説かない方が失礼だぞ。幸はもっと女の扱いを勉強した方がいいようだな。そこだけはお前の教育を間違えてしまったようだ」
信玄様が幸村を見て、諦めたようにため息をついた
うん。それは私も信玄様に同意だわ。
幸村は女性の扱いを、信玄様の半分でいいから見習った方がいい。
「うっさいです。余計なお世話ですから。そもそも俺、女にうつつを抜かすほど暇じゃないんで。」
「お前…?!謙信に似てきたんじゃ?!」
幸村の言葉に信玄様が心配そうに青ざめる
「は?誰が女嫌いなんていいました?
俺にだってちゃんと……」
と言いかけてて慌てて口をつぐんだ。
もちろんそれを見逃す信玄様ではない。
「なんだ?幸。お前…誰か慕う女がいるのか?!」
信玄様が幸村の肩をつかんで揺さぶる
「だーーーーー!!!離せ!!俺もう行きますから!!!それ!見ておいてくださいよ!!!」
そう言って信玄様の手をスルリと抜けると、忍び顔負けの素早さで出て行った
「あいつ…佐助と一緒にいすぎて、忍びの術まで習得したのか?!」
信玄様が幸村の逃げ足の速さに驚いて呟いた
「…っふ。ふふ。」
その信玄様の顔を見て思わず私が笑う。